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特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見3 [特集]

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見3

9月25日掲載

3. 小畑精和(明治大学)

州議会選挙結果とケベック社会の未来

 9月4日に行われたケベック州議会選挙では、これまでの「主権派」か「連邦派」かという対立軸に加えて、「市場原理」がどこまで優先されるのかも問われた。
 総議席数125のうち、主権連合派のケベック党(PQ)が54議席 (得票率は31.94%)を獲得して第一党になったが、少数与党である。政権与党だったケベック自由党(PLQ)は50議席(得票率31.21%)にとどまり、現首相のジャン・シャレ氏も落選した。昨年誕生した新政党の「ケベックの未来連合」Coalition Avenir Quebec(CAQ)は19議席(27.06%)。緑の党のケベック版「ケベック連帯」Québec solidaireが2議席(6.02%)。
 PLQは汚職まみれでいやだけど、ケベックの「独立」も不安だし、かといって、第三極のCAQもまだ未知数だし、、、といったとまどいもあろうが、この選挙結果は「新たな争点」に対するケベック州民のためらいの反映でもあろう。
 今回の選挙では、市場原理をどこまで優先させるのかも問題になっていた。ケベックでは今年学費値上げ反対の学生運動が広がり、ストやデモが大規模に展開されてきた。3月22日にはモンレアルで20万人のデモ参加者を数え、この数字はケベック史上最大と言われている。ことは単なる学費値上げ問題から、「市場原理至上主義」批判へと広がっていった。PLQ政府はデモやピケなどを規制する78号法(のちに12号法)を州議会で可決させて対抗した。これに対して多くの教員組合、PQは学生支持を表明していた。汚職疑惑だけでなく、若者の支持を失ったこともシャレ政権敗北の原因の一つだったのである。
 学費値上げに代表されるように、PLQはケベック社会をより市場原理に委ね、州政府の負担を軽くする方向に舵をとろうとしてきた。今回の選挙結果はその方向に州民が疑義を挟み、PQが一応勝った形になったが、第三党のCAQは「市場原理」優先でPLQに近く、「大きな政府」志向を州民が支持したともいえない。
 また、PQはPLQがフランス語を十分に擁護していないとして、フランス語憲章の適用強化を主張している。この点でもCAQはPLQに近い立場である。
 マロワ新首相は学費値上げの撤回、12号法の廃止を早々に宣言した。しかし、PQも過半数をえたわけではなく、連立を組むCAQは学費値上げ賛成であり、新政府の前途は多難である。確かに、学生や労働組合はPQの勝利を歓迎しているし、党首のポーリーヌ・マロワはケベック史上初の女性首相になる。しかし、勝利の高揚はなく、Le Devoir紙の世論調査によると、有権者の48%が今回の選挙結果を不満に思っている。学生団体もPQが学費値上げ撤回を実施できるのか注視している。
 また、勝利直後のマロワ党首が演説中にPQの集会が暴漢に襲われ、一人が射殺され、一人が負傷した。犯人は多くの銃器を所有していたという。そのため、銃規制強化も浮上してきており、規制を弱めようとする連邦政府と対立する問題が一つ増えることになる。
 今後ケベック社会はどういう方向に進んでいくのだろうか。10月6日の大会でDenise Daoust UQAM名誉教授が「フランス語憲章」について講演してくださる。また、12月には、Gérard Bouchard UQAC教授が来日する。両教授が今回の選挙結果をどのようにとらえ、ケベックの未来をどのように考えているのか、今から講演を聞くのが楽しみである。
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